アルマ・エランテ ~さすらいの魂~ 《中南米ピアノ名曲コレクションⅡ》下山静香
- Triste pampeano No.3 (motivo folklórico)
哀しきパンペアーノ(フォルクローレのモチーフによる) - Danzas argentinas I. Danza del viejo boyero
アルゼンチン舞曲集作品2 I. 年老いた牛飼いの踊り - Danzas argentinas II. Danza de la moza donosa
アルゼンチン舞曲集作品2 II.優雅な娘の踊り - Danzas argentinas III. Danza del gaucho matrero
アルゼンチン舞曲集作品2 III.はぐれ者のガウチョの踊り - Aires nacionales argentinos 1er cuaderno, 5 tristes Triste No.1(Jujuy)
アルゼンチンの歌 第1巻「5つのトリステス」作品17 Triste No.1(Jujuy) - Aires nacionales argentinos 1er cuaderno, 5 tristes Triste No.2
アルゼンチンの歌 第1巻「5つのトリステス」作品17 Triste No.2 - Aires nacionales argentinos 1er cuaderno, 5 tristes Triste No.3
アルゼンチンの歌 第1巻「5つのトリステス」作品17 Triste No.3 - Aires nacionales argentinos 1er cuaderno, 5 tristes Triste No.4 (Córdoba)
アルゼンチンの歌 第1巻「5つのトリステス」作品17 Triste No.4 (Córdoba) - Aires nacionales argentinos 1er cuaderno, 5 tristes Triste No.5 (Córdoba)
アルゼンチンの歌 第1巻「5つのトリステス」作品17 Triste No.5 (Córdoba) - Palomita blanca
パロミタ・ブランカ(白い小鳩) - Gato
ガト - Zamba del cocherito
御者のサンバ - Bailecito
バイレシート - Sonatina Allegretto
ソナティナ Allegretto - Sonatina Lento muy expresivo
ソナティナ Lento muy expresivo - Sonatina Presto
ソナティナ Presto - Cantilena No.1 “Santa Fe para llorar”
カンティレーナ第1番〈泣いているサンタフェ〉 - Por una cabeza
ポル・ウナ・カベサ(首の差で)
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下山静香プロフィール
桐朋学園大学卒業。同室内楽研究科修了。99年、文化庁派遣芸術家在外研修員としてマドリードへ。故R.M.クチャルスキ、M.サバレタのもとで研鑽。ロドリーゴ生誕100年には、マドリード、ベルギーなどでの記念コンサートに出演。
その後バルセロナのマーシャル音楽院にて、C.ガリガ、故C・ブラーボ、故A.デ・ラローチャに師事。マドリード、アランフェス、バルセロナほかに招かれリサイタルを行う。
帰国後は、オール・スペインプログラムでのリサイタルを数多く開催、また、スペイン・ラテンアメリカ作品の室内楽、ピアノライブ「ラテンアメリカに魅せられて」、美術・文学ジャンルの造詣も生かした<音楽×美術><おんがく×ブンガク>などの斬新なコンサートシリーズを継続し、これまでにない切り口が話題となっている。
ソロのほか、室内楽・二重奏も重要な活動軸とし、これまでにウィーン・ヴィルトゥオーゾ、チェコフィルハーモニー六重奏団、S.フッソング(acco).M.ホッセン(vl)、R.シメオ(trp)など数々の海外アーティストと共演。
NHKスペシャルやドラマ、美術展などにおいてピアノ演奏を数多く担当。NHK-BSプレミアム「クラシック倶楽部」、NHK-BS「ぴあのピア」、NHK・Eテレ「ららら♪クラシック」、TBS-BS「本と出会う」、NHK・FM、フランス国営放送ラジオなどに出演している。
現在、各地で精力的な演奏活動を展開するかたわら、執筆・翻訳・朗読とそのフィールドは進化し続けている。また、桐朋学園大学音楽学部および東京大学教養学部にて、スペイン、ラテンアメリカ音楽の講義を担当。2012年より、NPO法人JML音楽研究所にて「スペイン音楽演奏講座」を開講。2015年より「下山静香と行くスペイン 音楽と美術の旅」を実施(主催:郵船トラベル)。これまで、自治体やカルチャーセンター、大学(京都外国語大学、東京大学、東京藝術大学、慶應義塾大学、上智大学)に招かれ、特別講義やレクチャーコンサートを行っている。
★CD:《アランフェス》(Virgo/Art Union),《ファンダンゴ》(N&F/Art Union),《PERLA ~マイ・フェイヴァリッツ・モーツァルト~》(molto fine),《アルベニス名曲集》(molto fine),《モンポウ 前奏曲 & プーランク 夜想曲》(fontec),《ショパニアーナ》(fontec),《サウダージ・エン・ピアノ》(fontec),《ロマンサ・デ・アモール》(エスツウ/シルフィードレコーズ),《ゴィエスカス》(fontec),《ライブ in アルバラシン》(molto fine)
●Blog「裸足のピアニスト・下山静香のブログ」
●Facebook Page「下山静香 ~ピアニスト・執筆~ Shizuka Shimoyama, pianist」
SHIZUKA SHIMOYAMA pianist
Graduated from Toho Gakuen School of Music; next finished the post graduate course of the Chamber music. There she studied under Kyoko Ogawa, Henriette Puig=Roget, Kazuoki Fujii and many other performers or music specialists and educators. She participated in the Master Classes and Music Festivals in Europe, (in Italy, Austria, Belgium, France, Holland, Italy and Spain), studied under Cristian Ivaldi, Pierre Pontier, Jose Francisco Alonso, Maria Curcio etc.
1999 she went to Spain as an overseas fellow of art dispatched by the Japan Agency for Cultural Affairs, and in Madrid studied under Rosa Maria Kucharski who was the director of EPTA España. There she investigated many important Spanish composers and obtained their works as repertoire, among them acquired all composition for piano of Joaquín Rodrigo should be notable. After that studied in the Academia Marshall of Barcelona under the admirable pianist Alicia de Larrocha, Carmen Bravo, Carlota Garriga etc. She was invited to play in Madrid, Barcelona, Aranjuez, Liège etc.
She has played for many TV programs of NHK of Japan, also played for the radio NHK-FM, Radio-France etc. In the memorial year of Mozart (2006) she was invited to Sendai Classic Festival and played 13 piano sonatas, Rondo, etc. In the “Chopin year” (2010) played in the Area concert titled “Universe of Chopin” of La Folle Journeé in Tokyo.
Chamber music is also one of her important activities; she has played with Czech Trio, Wien Virtuoso, Czech Philharmonic Sextet, Stefan Hussong, Mario Hossen, Rubén Simeó, Alejandro Vela, Vivian Sun etc.
She released 10 discs (“Aranjuez ~ Shizuka Shimoyama Piano Recital ~”,“Fandango ~ Shizuka plays Iberian Baroque ~”,“PERLA ~ My Favorites Mozart ~“,“Homenaje a Albéniz”,“Mompou Preludes & Poulenc Nocturnes”, “Chopiniana”,“Saudade en Piano”,”Romanza de amor”,”Goyescas”, ”Live in Albarracin”) and all of them obtained very good criticism, especially mentioning the sense of rhythm and quality of the sound, melting balance of intelligence and emotion. Among them 4 CDs received award if special evaluation on the Journal “Record-Geijyutsu”. She presides some unique concerts like “Iberian Chamber Music Series”, introducing chamber music of Ibero-America.
She is also active in the field of writing.
She is now Vice-President of the Japanese Society of Spanish Piano Music, a part-time lecturer and instructor of Toho Gakuen School of Music, the University of Tokyo.
『アルマ・エランテ ~さすらいの魂』に寄せて / 下山静香
南米大陸ではブラジルに次ぐ国土を擁するアルゼンチン。16世紀から続いたスペイン支配から独立を果たしたのは1916年のことです。19世紀後半から終盤にかけての西欧化政策でヨーロッパ系移民を大量に受け入れたため、中南米諸国のなかでも突出した白人国家となりました。しかし、それまでの歴史をみれば根底ではやはり混血国家であるといえます。
音楽においても、他の中南米諸国同様にヨーロッパ(ここでは主にスペイン)、アフリカ、先住民からの要素が入りましたが、ブラジルやキューバにみられるようなアフロ性は薄く、現地に生まれ育ったクリオージョの音楽性を軸に、アルゼンチンならではの音楽が形成されていきました。
アルゼンチンというとまず「タンゴ」が連想されると思いますが、その本場は「南米のパリ」とも呼ばれる首都ブエノスアイレスで、言わば都市型の音楽です。しかし、この国の音楽地平を広く見渡せば、実に多彩で魅力的なフォルクローレの宝庫であることに気づかされます。なかでもクラシック系音楽とかかわりが深いのは、パンパが育んだ音楽です。
ラプラタ川の流域、ブエノスアイレスを囲むように広がる大草原「パンパ」に暮らしていた民、「ガウチョ」― 社会からはぐれた入植スペイン人を祖とし、やがて先住民と混血した彼らは、おもに牛の放牧に従事し、馬とギターを道連れとして放浪を続ける厳しい生活のなかで孤高の精神文化を育みました。そんなガウチョの世界は、19世紀後半から20世紀にかけての民族主義意識の高まりのなかで美化され、「アルゼンチン的な精神」の象徴として文学に好んで取り上げられたのでした。そしてその動きは、音楽をはじめとする諸芸術にも影響を及ぼしています。
今回、「中南米ピアノ名曲コレクション」第2弾を編むにあたって「タンゴだけじゃないアルゼンチン」をテーマにしてみたい、という思いがありました。まず浮かんだパンパやガウチョのイメージを柱として、アルゼンチンを代表する作曲家による有名曲・掘り出し曲とりまぜてのラインナップにつながっていきました。そのなかに、当シリーズのプロデューサーでもあるギタリスト竹内永和さんの選曲・アレンジによるバルスとタンゴの名曲が配置されるという趣向になっています。
パンパに生きた人々の生き様に思いを馳せた『アルマ・エランテ ~さすらいの魂』。アルゼンチンの大地に躍動するリズムと心のうたを、末永くお聴きいただけたら幸いです。
「タンゴ」だけじゃないアルゼンチン音楽の魅力
アルゼンチンの音楽というと、真っ先に連想するのが「タンゴ」でしょう。しかし、欧州からの移民や先住民からなる混血国家であるこの国は、多彩で魅力的な音楽にあふれています。選曲には、「タンゴだけがアルゼンチン音楽ではない」(下山氏)という想いが込められています。中でも、大草原パンパに暮らす民「ガウチョ」の音楽である「フォルクローレ」の佇まいをまとった曲を中心に、他で聴くことができない新鮮さも相まって、心に刻み込まれる作品に仕上がっています。
4人のアルゼンチン作曲家の曲が収録されています。アルゼンチン民族主義的音楽を確立した一人フリアン・アギーレ、国際的な名声を得たアルベルト・ヒナステラ、アルゼンチン・ロマン派ともいうべきカルロス・グアスタビーノ、フォルクローレの巨匠アリエル・ラミレスの4人が、およそ100年の間に生み出した、魅力的なピアノ曲の数々です。
また、本アルバムのプロデューサーでもあるギタリストの竹内永和氏の選曲とアレンジによるタンゴの名曲がピアノとギターのデュオで2曲収録されている点も見逃せません。アルバムを通して聴くと、この2曲が句読点の役割を演じており、なだらかな起伏を伴う心地よい聴取体験を提供してくれます。
「開いた音のピアノ」と裸足で演奏する理由
今回のレコーディングで下山氏は、ピアノの調整において「開いた音」を求めたといいます。「開いた音」とはどのような音なのでしょうか。楽器としてのピアノを知り尽くした下山氏一流の極めて感覚的な表現ですが、誤解を恐れず意訳すると、各弦の実音(下山氏は「地の音」と表現)はもちろん、その音が含むあらゆる倍音が過不足なく周囲の空気を震わせ、そしてピアノから放出される、そんなイメージだと思います。
「ギターの開放弦のようなイメージ」(下山氏)とも付け加えます。たしかにギターの開放弦を爪弾くと、「地の音」に加えその音が内包する倍音が、解き放たれたかのように一気に拡散するイメージがあります。ピアノでラテン系の曲を演奏する場合、このような「開いた音」から拡散する豊かな倍音を、あるときは解き放ち、あるときは抑え込むことで巧みにコントロールしながら演奏家自身の手で音作りをしてこそ、曲本来の魅力を引き出すことができるのでしょう。
「はだしのピアニスト」としてレコーディングはもとより演奏会本番でも素足でピアノに向き合う下山氏ですが、何か特別な理由でもあるのでしょうか。「心身ともに自由で解き放たれた状態でいたい」(下山氏)というのが解答なのですが、それは次のような理由に依ります。
ピアニストは、ホールなど毎回異なるピアノに対峙しなければなりません。そのような状況で、最高の演奏を行うには、ピアノの特性や状態を足先を通しカラダ全体で感じながら、ペダルを細かく1音づつ踏んだり、ビブラートをかけたりと、極めて繊細なペダルワークが求められます。「私にとって靴は、それらを阻害する要因であることに気づきました」(下山氏)と素足の理由を話してくれました。
※当該記事の初出はe-onkyoニュース記事(弊社代表が執筆)
ライナーノーツ
19世紀半ばから大劇場が次々にオープンし、一大音楽都市となったブエノスアイレスには、世界中から高名な芸術家たちが来訪していた。アルゼンチン出身の音楽家たちも国内外で研鑽ののち活躍を始め、自国のアイデンティティを盛り込んだ民族主義的な芸術音楽を確立していった。
この時期の主な作曲家として、サトゥルニーノ・ベロン(1847-1898)、フランシスコ・ハーグリーヴス(1849-1900)、アルトゥーロ・ベルティ(1858-1938)、アルベルト・ウィリアムズ(1862-1952)などが挙げられる。その後に続く世代も、カルロス・ロペス=ブチャルド、フェリペ・ボエロ、フアン・ホセ・カストロ、アンヘル・エウヘニオ・ラサラなど、アルゼンチンの音楽界で活躍した作曲家は枚挙のいとまがない。
本アルバムには、アルゼンチン民族主義的音楽を確立した一人フリアン・アギーレ、国際的な名声を得たアルベルト・ヒナステラ、アルゼンチン・ロマン派ともいうべきカルロス・グアスタビーノ、フォルクローレの巨匠アリエル・ラミレスの4人がおよそ100年の間に生み出した、魅力的なピアノ曲が収録されている。
また、このシリーズにおけるスパイスの役割も果たすギターとピアノのデュオ曲として、不世出のタンゴ歌手カルロス・ガルデルと、バンドネオン奏者でもあったアンセルモ・アイエタによる名曲が選ばれている。