◆真のヴィルトゥオーゾが極めたバッハ演奏の極地!
フランスが生んだ世界的名手ジュディカエル・ペロワのこの新しいバッハアルバムは、ドイツのコブレンツで行われた第31回ギターフェスティバルでの演奏を収録した、貴重なライヴ盤である。
コンサートの生演奏ならではの熱気をそのままCD化した稀有なアルバムであり、あらためてジュディカエルのその完璧なマエストロぶりに圧倒される。
ライン川とモーゼル川の合流地点に位置する風光明媚な観光都市コブレンツ。この長閑な風景に囲まれた地で、9日間に渡り行われるギターの祭典は、毎年大変な人気を博しており、期間中、連日行われる世界のトップギタリストのコンサートは、多くのギターファンを魅了している。スター揃いの出演者の中でも、ジュディカエルは近年の常連で、驚異的なプログラムを引っ提げ毎回颯爽と登場するが、2023年はバッハの作品を数多く演奏し、フェスティバルの話題を独占した。
このCDに収められたバッハの作品集は、リュート組曲を中心にいずれも難曲揃いであるが、ジュディカエルは、実に軽々と弾きこなし、非常に高いレベルでバロック音楽の真髄を聞かせてくれる。
スタジオ収録とは、また違う、生のコンサートならではの臨場感! 楽器を見事に鳴らし切った迫力溢れる演奏を、是非最後までお楽しみ頂きたい。

収録曲
リュート組曲 第2番 イ短調 BWV997
Lautensuite a-moll, BWV997(Transcription ~ Tilman Hoppstock)
01 プレリュード Prelude
02 フーガ Fuga
03 サラバンド Sarabande
04 ジーグ Gigue
05 ドゥブル Double
リュート組曲 第3番 イ短調 BWV995
Lautensuite a-moll, BWV995(Transcription ~ Tilman Hoppstock)
06 プレリュード Prelude-Très viste
07 アルマンド Allemande
08 クーラント Courante
09 サラバンド Sarabande
10 ガヴォット I & II Gavotte I & II
11 ジーグ Gigue
協奏曲ニ長調 BWV972
Konzert in D-Dur BWV972(Transcription ~ Judicaël Perroy)ÉDITIONS FOUGERAY
12 アレグロ Allegro
13 ラルゲット Larghetto
14 アレグロ Allegro
プレリュード、フーガ&アレグロ BWV998
Prelude, Fugue & Allegro BWV998(Transcription ~ Tilman Hoppstock)
15 プレリュード Prelude
16 フーガ Fugue
17 アレグロ Allegro
ジュディカエル・ペロワ(ギター)
楽曲解説
リュート組曲イ短調 BWV997
バッハのライプツィヒ時代、1740年頃の作品と考えられている組曲で、バロックソナタ風の前半と、パルティータ風の後半を混ぜ合わせた構成となっている。
原典として、バッハの直弟子アグリーコラによる鍵盤用五線譜の他に、やはりバッハの弟子ヴァイラウフのリュートタブラチュア(フーガとドゥブルを欠くもの)が残っている。
また、これはリュート作品の一部に言われている事として、1739年に、高名なリュート奏者ヴァイスがライプツィヒのバッハのもとを訪れた事が、作品の成立に少なからぬ影響を与えた可能性も推測されている。
プレリュード
リュートのタブラチュア譜では、“ファンタジア”との表記が有る。冒頭、下降するバスの上に、印象的な上昇型の旋律が展開して行く、美しい流れを持つ前奏曲。
フーガ
8分の6拍子の重厚なフーガ。プレリュードの上昇型のテーマを受け継いだ冒頭から、反行フーガの巧みな展開が続き、中間部では、16分音符の華麗な走句が続き、盛り上がりを見せる。
サラバンド
美しく印象的な旋律を持つサラバンドで、セゴビアの昔から、単独の小品としてコンサートで取り上げられる事も多い。
ジーグとドゥブル
重厚な組曲を締め括るに相応しい、付点を含む華やかなフランス風ジーグ。ドゥブルは、そのジーグを更に華麗に展開したもので、絶え間なく続く16分音符の疾走感は、名手の腕の見せどころとなっている。
リュート組曲イ短調 BWV995
〈無伴奏チェロ組曲第5番〉BWV1011をバッハ自身がリュート用に編曲した作品(自筆の二段五線譜が現存)。
典型的なフランス風の組曲で、チェロ版と比較すると和音や付点の処理等に色々な工夫が見られる。
プレリュード
フランス風序曲のスタイルを取り、2分の2拍子の自由な序奏部分から、途中、tres visteの表記と共に8分の3拍子の快速な部分へと繋がって行く。
アルマンド
2分の2拍子の中庸なテンポのアルマンド。模倣的な動き(多声的な動き)も見せつつ、付点リズムの部分で、独特の味わいを感じさせながら織り成すフレーズが、フレンチ・バロックの魅力に溢れている。
クーラント
2分の3拍子のゆったりしたクーラント。華麗な装飾音により、宮廷舞曲の典雅な趣きが浮き立つ。
サラバンド
神秘的な雰囲気を持つ独創的なサラバンド。淡々と進む緩やかな3拍子の中で、自然に生まれる響きの残し方に、奏者の工夫が活かされてくる。
ガヴォット I & II
典雅な雰囲気を持つガヴォットIは、生き生きとした和音の躍動感が魅力。ガヴォットIIには、“ロンド風に”との表記が有り、三連符の華麗な楽句が心地良く駆け巡る。
ジーグ
終曲に相応しい、8分の3拍子の快速なジーグ。付点音符の巧みな処理により、推進力が増し、エネルギッシュに締め括られる。
協奏曲ニ長調 BWV972
原曲は、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲ニ長調 RV230(「調和の霊感 作品3」の第9番)で、バッハがそれをチェンバロ独奏用に編曲した作品。演奏者ペロワ自身のギターへの編曲は、ギターの特性をフルに生かしたもので、その豊かな響きが大変魅力的である(FOUGERAY出版社)。
第1楽章 アレグロ
ゆったりした序奏部に続き、快適なテンポで、16分音符の楽句が流麗に綴られて行く。各声部が立体的に浮かび上がるペロワの演奏は、声部間の応答がクリアで心地よい。
第2楽章 ラルゲット
4分の3拍子の、深みの有る緩徐楽章。緩やかなアルペジョを駆使したペロワの演奏は、独創的な和音の変化が美しい。
第3楽章 アレグロ
快活な、8分の3拍子の最終楽章。エネルギーに満ちた終章で、急速なスケールの部分と、豊かな和音の響きの対比が鮮やか。
プレリュード、フーガ、アレグロ BWV998
1735年頃に書かれたと思われる作品で、“リュートまたは、チェンバロのための”との表記が確認できる(次男C.P.エマヌエル・バッハの遺品から発見されたJ.S.バッハの自筆五線譜有り)。
プレリュード
8分の12拍子。高音域から、緩やかに下降してくる旋律は、天から降り注ぐ音楽を想起させる。
フーガ
BWV997のシリアスなフーガとは異なり、穏やかで明るさを感じさせるテーマを持つ。
中間部は、自由なアルペジョで展開して行き、ダ・カーポを伴う三部形式の構成となっている。
アレグロ
8分の3拍子の、明快なアレグロ。いかにもバロック的なシークエンスの中、16分音符のスケールが絶え間なく続き、演奏者の力量を遺憾無く発揮できる終曲。
(解説:竹内永和)
ジュディカエル・ペロワ
フランスの生んだ世界的ヴィルトゥオーゾとして知られるジュディカエル・ペロワは、1973年、パリ生まれ。
7歳よりギターを始める。
11歳で、ヴィヴァルディの協奏曲のソリストに抜擢。
オルネー=スー=ボワ国立学院でデリア・エストラダとレイモン・グラティアンに師事し、1988年に1等賞で卒業。
1994年、パリのエコール・ノルマル音楽院を演奏家ライセンスを得て卒業。
1996年、パリ国立高等音楽院を1等賞で卒業。
両校で、アルベルト・ポンセに師事、同時にロベルト・アウセル、ダニエル・ラヴィアルにも師事する。
1997年、現代最高の権威を持つ、アメリカの第15回GFA国際コンペティションにおいて、圧倒的なパフォーマンスで優勝。
完璧で並外れたアーティストとして称賛され国際的キャリアを築いて行く。世界ツアーにおいては、モスクワのチャイコフスキー・ホール、タイペイの国家音楽ホール、メキシコの共和国劇場、アムステルダムのコンセルトヘボウ等でもリサイタルを行なった。
CD録音においても、10枚を数えるフルアルバムを発表し、ナクソスからのバッハ、ポンセの作品集、GHAからのウルクズノフ&ボグダノビッチの作品集(世界初録音を含む)等が高い評価を獲得している。
また、教授活動も盛んに行なっており、世界中の主要な大学やコンセルヴァトワールから誘いを受けている。教え子の多数がメジャーな国際コンクールで優勝を重ねており、ティボー・ガルシアを始め多数の若手トップギタリストを輩出している。
フランスのリール音楽大学、サンフランシスコ音楽大学の教授を歴任。
スイスのジュネーヴ音楽院の教授としても活躍し、優れた日本人ギタリストの育成にも貢献している。
【CD】
「バッハ編曲作品集」(ナクソス)
「ポンセ作品集 vol.4」(ナクソス)
「ギターの魔力」(Bayard Musique)
他多数。
【出版楽譜】
「協奏曲 BWV972 バッハ作曲~ペロワ編曲」(EDITIONS FOUGERAY)
※ BWV995、997、998は、Tilman Hoppstock編「J.S.BACH BWV995,997,998」(Prim-Musikverlag Darmstadt)の版を使用。
クレジット
Recording Location: Rhein-Mosel-Halle, Koblenz, Rheinsaal
At the 31st Koblenz Guitar Festival & Academy on 22nd May, 2023
Tonmeister (Producer/Engineer/Editor): Moritz Reinisch
[Japan side staff]
Producer: Noriyasu Takeuchi & Yoko Sone
Mastering Engineer: Mikito Takeyari (a.k.a Junichiro Yamasaki)
Advisor: Yasuaki Hiura
[Instrument]
Guitar: Greg Smallman 2000
Strings: Savarez - Alliance rouge (for trebles), Corum blue (for basses)
